宗祖・親鸞聖人のご法事である「報恩講(ほうおんこう)」。古くから地域や家庭では「ほんこはん」や「報恩講様」と親しみを込めて呼ばれ、私たち浄土真宗の門徒にとって、一年の中で最も大切にされてきた仏事です。
この法要の歴史は、親鸞聖人がご往生されてからまもなく始まり、実に七百五十年以上もの間、一年の欠かすこともなく、今日まで大切に勤め続けられてきました。戦乱の時代であっても、天災や疫病に苦しむ年であっても、この法灯が絶やされることは一度もありませんでした。
報恩講の大きな特徴は、京都の本山や各地の別院といった大寺院だけで厳かに勤められるものではない、という点にあります。地域の末寺(お寺)はもちろんのこと、それぞれの門徒のお宅(お内仏)にいたるまで、あらゆる場所で毎年欠かさず勤められてきた歴史があります。時代がどれほど変わろうとも、私たちの先祖は、家庭の中でこのお給仕の灯を絶やすことなく、次の世代へ、またその次の世代へと繋いできました。
では、なぜこれほどまでに長く、深く、この仏事が大切にされてきたのでしょうか。
それは、報恩講という仏事が、親鸞聖人によってお念仏が私へと伝わったことに感謝し、親鸞聖人をはじめとする本当に沢山の方々によって今日まで命がけで喜び、伝えられてきた「感謝の歴史」を尋ねる大切なご縁でもあるからです。
親鸞聖人が生涯をかけて私たちに伝えてくださったお念仏のみ教え。それが、何百年もの時を超えて今の私にまで届くために、どれほど多くの先人たちの歩みや願いがあったことでしょうか。名もなき多くの妙好人(みょうこうにん)たち、そして我が家の先祖たちが、日々の暮らしの中で「南無阿弥陀仏」を称え、喜び、手渡してくれたからこそ、今の私がここにいます。それは決して当たり前のことではなく、奇跡のような有り難い出遇いです。
「ようこそ、今年もほんこはんを勤めることができた」
今年も本山から我が家まで、満ちあふれる感謝の心とともに、お念仏を伝える歴史のなかに生かされている有り難さを、共に味わわせていただきましょう。